撮影現場における演出部の重要な役割は「段取りよく現場を進めていくこと」です。美術部や衣裳部などの準備班と連携して万端に整え、俳優部の芝居や撮影効率を考えて各部と相談しながら撮影順を決め、撮影現場を仕切ります。「段取りよく」するのはけして早く帰りたいからではありません。効率よく撮影して無駄な時間を削り、例えば俳優部に余計な待ち時間を作らずベストな状態で芝居してもらったり監督が演出する時間を多くしたり美術部が造形にこだわる時間をもてたり、撮影部がほしい雲がくるまで待てたりするのです。
演出部は俳優だけでなくスタッフなど現場にかかわるすべての人々が能力を最大限発揮できるよう現場を「演出」することも仕事です。そのためには日ごろからコミュニケーションをよくとり相手の気持ちを掴んでおくことが大切です。また、現場を引き締めるためにわざと大きな声を出したり、泣きのシーンの前は現場を静かにさせたりetc.その時々に応じて柔軟に対応してください。
演出部の仕事はすべてが「演出」につながっています。すべては「いい芝居」を生み出すため「いい映画」にするためです。
現場での演出部の動きは多岐にわたりますので、下記に簡単にまとめます。
- (ロケセット撮影の場合)セカンドは衣裳メイク部と先発→支度部屋や控室の準備→俳優部やエキストラが時間通り到着するか確認し支度場所や控室に案内する→エキストラに撮影シーンの説明をしておく。
- サードは美術・装飾部と先発→ロケセットの掃除や飾りの手伝いをしつつ芝居で使う道具の確認。
- チーフは監督とともに出発→現場到着後、監督やカメラマンとともに撮影するシーンの芝居やカット割りを確認(演出部全員揃うことが望ましい)
- 撮影・照明・録音などの準備の間はタイミングをみてスタンドイン(俳優部の想定される芝居の位置に立つ)してカメラアングルやライティングを確認。俳優部の支度の進み具合や小道具の準備を気にしておく。また、近隣で予定外の工事など始まり騒音など気になる場合は制作部と音止めの段取りを確認しておく。
- セリフの変更が出た場合は俳優部や記録、録音部に伝え、大きな変更の場合は改訂したシーンの台本を皆に配る。
- 「段取りいきます」「俳優部入ります」など次に現場で何をするのか皆がわかるように声をだす。
- 俳優部の支度が済み、各部の準備もひと段落したら「段取り」をする。俳優部を控室から現場に案内→監督がシーンや芝居の説明。(専門的な所作などは助監督が説明したり指導の方を呼んで説明してもらう)
- 俳優部が芝居し大体の動きが決まったら→俳優部を控室や現場近くの待機場所に案内。
- カット割りの整理、撮り順の確認→各部の準備再開。
- 演出部はスタンドインしつつ、俳優の立ち位置や芝居の止まり位置を確認しその場所をマーク(通称:バミリ)。
- カメラアングルやライティングの確認。音止めや人止め、車止めのフォーメーションを確認する。
- エキストラのいるシーンの場合、俳優部より先にエキストラを現場に入れて芝居をつけテストを行う。
- 諸々のセッティングがすんだら俳優部を現場に案内して、何度か「テスト」を行う。
- 監督の「用意、スタート」の合図でカチンコを鳴らす(サードorフォース)
- セカンドはエキストラの動きを確認し、修正していく。
- 芝居をはじめるきっかけを出す場合もある(通称:Qだし)
- 目線(俳優はその場所をみて芝居をする)をだす場合もある。
- 各部の準備が整い芝居が固まったら「本番」を行う。人止めや車止め、音止めの指示を出して、監督に「スタート」をかけてもらう。「カット」がかかるごとに止めの解除の指示をだす。監督のOKがでるまで続く。
- ㊟段取りから本番までで最も大切なのは「しっかりと芝居をみる」ことです。俳優がどの導線で何を持ちどうやって動いたかをすべて記憶します。台本に立ち止まった位置や振り返ったタイミングなどメモしておくのもいいでしょう。芝居を理解している演出部がスタンドインをして準備が進んでいきます。
- 演出部の芝居で代役テストすることもあります。また、俳優部の芝居がベストなものか自分が監督のつもりでみてください。芝居がうまくいっていないと思った場合は監督や俳優部に助言することもあります。
- カットごとにテストと本番を繰り返し一つのシーンを撮影していくが、どのカットの順番で撮影するかカメラマンなどと相談し進めていく。カメラが向く方向や画角、芝居の返しどころなど決まったことは声を出して皆に伝えていく。
- 準備に時間がかかり待ち時間が長くなりそうな場合には俳優部に説明する。
- サードは次の撮影シーンの小道具が準備されているか確認する。
- セカンドは次の撮影シーンの衣裳を俳優部が着ているか、レールやイントレなど使用する機材が準備されているか確認する。
- 撮影の途中で入ってくる予定の俳優部が時間通りに到着したか確認する。
- チーフは現場のオシマキ(オシ:予定した撮影時間を超過していること、マキ:予定した撮影時間よりはやく撮影が進んでいること)によって俳優部の入り時間を変えることもある。その連絡を各俳優事務所にする。
- チーフは各部と調整し天候を考えながら撮影前日までに日々スケジュールを作成。
- 参考⑦日々スケジュール